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20211212

萩・須佐(山口県)

■巡検スケジュール■
12/12 広島大学(6:40)→萩しーまーと(10:00)→笠山展望台(10:30)→笠山火口(11:25)→海岸の溶岩地形観察(12:00)→須佐(14:00)→畳ヶ淵(15:25)→下松SA(19:40)→広島大学(21:50)

現職の先生方との合同研修

冬の恒例行事となってきた広島県地学部会との合同巡検.今回は地学教育学会の第1回オンライン巡検で紹介された”萩ジオパーク”にて.

講師にはジオパーク専門員の白井先生をお招きして実施しました.

 笠山展望台

まず向かったのは萩市街地からすぐのところにある笠山.笠山は山口県北西部に点在している阿武単成火山群の一つで,その中でも約1万年前に活動したという,とても最近できた火山である.

最初は展望台にある休憩所で,これからの流れの確認.冬の日本海の風から身を守れることにありがたみを感じるところが今回の巡検のスタート.

展望台の外に出て,日本海の島々を観察.この島々も阿武単成火山群を構成する火山.阿武単成火山群は大きく分けて「玄武岩質」なものと「安山岩質」なものの2種類に大別されており,玄武岩質な溶岩からなる島は平べったい感じで,安山岩質な溶岩からなる島は少しこんもりとした感じ.島の形も地質と関連づいていることがよく分かる.

展望台の中には先程観察した島で採取された岩石が展示されている.これは良い教材になる!と,こぞって撮影.

ここからモデル実験のコーナーに.火山モデルのうち,比較的粘性の低い玄武岩質溶岩をピンク,玄武岩質溶岩と比較すると粘性の大きい安山岩質溶岩を水色で着色し,それぞれを噴出させ,できた山の形を見比べてみる.よく片栗粉なんかが使われているが,このときは「歯科印象材」を用いているとのこと.教員になったら活用してみよう.

それぞれのモデルを実際の島の形と対応させてみた.右が安山岩質溶岩からなる島.左が玄武岩質溶岩からなる島.

 笠山噴火口

次は先程までいた展望台から降りてすぐのところにある笠山の噴火口へ.噴火口周辺の岩石は中がスカスカで持ってもとても軽いスコリアからなる.

噴火口だけあって,その場所だけ凹んでいる.この中は風も吹いておらず,こころなしか少し暖かい.

ここで,このようなスコリア丘がどのようにして形成されたのか,その際火山内部ではどのような現象が起こっていたのか,コーラを使用したモデル実験と合わせて,ブラタモリ的なフリップとともに説明してくださった.教材の使い方,その時の説明方法など,どれをとっても勉強になるなあ.と感心する学生たち.”噴火口の動画(萩ジオパークyou tube より)

 海岸の溶岩地形

一行は笠山の海岸へ.まず出迎えてくれたのは潮の干満で水面の一が上下する池.

なんでも,笠山を構成する安山岩は冷却される際に細かい亀裂が入っていて,その亀裂から海水が入り込んで来るため潮の干満によって海水面も上下するらしい.笠山の付け根くらいにある明神池もそれと同じ原理.

今回は白井先生が解説してくださったが,同じ内容は近くの看板にも書かれてあるので,詳しい人と一緒に来なくても全然楽しめる感じになってます.

しばらく椿の群生地を歩くと,海岸に出てくる.目の前には,展望台のときに確認した玄武岩質の溶岩からなる島が目の前に.向かって右手側が高くなっていることから,おそらくこの島は右側に噴火口があって,そこから溶岩が流れ出たのであろうとのこと.

地学の人間にとしては,新鮮な岩石が露出している海岸に出るだけでテンションが上がる.これはもう先生,学生関係ない.みんなそう.ちなみにここは溶岩が流れ出たと考えられている場所.右奥の方から左の方に溶岩が流れ,その溶岩流の縁が急冷されて硬くなり,現在みんなが立っている場所を形成したと考えられている.

さらに歩くと,第1回オンライン巡検でも紹介されていた海岸に出てこれた.ここの岩石は岩肌がガサガサで,コケたらけっこうひどい擦り傷が残りそうな,いわゆるアア溶岩からなっている.今は採掘は禁止されているが,かつてここの岩石を採掘する際に作られた「クサビ」による穴が色んな所で確認できる.

当時採掘に用いられていた「クサビ」を実際にあてがってもらった.ピッタリ当てはまる.みんな「おお〜〜!」と感動.

午前の部も終了し,ここで一枚記念撮影.笠山だけで十分なのでは,,,?というくらい見どころ満載.さらに地学の先生方と一緒に見て回るので,あちこちで地質や地形に関する話が繰り広げられてとても楽しい.

 須佐ホルンフェルス

午後の部は,笠山から車で40分ほど移動したとこにある須佐ホルンフェルスから始まる.ここは須佐層群に斑糲岩が貫入したことによる接触変成作用を被った岩石が見られる.といっても,斑糲岩との接触面は一般の人では到底たどり着けないような場所にあるので,一般的に言われている須佐ホルンフェルスで見られるのは主には須佐層群の堆積構造や化石などがメイン.

ついたらまずは壮大な砂泥互層がお出迎え.とりあえずみんな写真撮影.

しばらくは各々興味のあるところを見て回る.すると,しっかりとした生痕化石を発見.多分これはエビ・カニ類の巣穴.

層の中に堆積構造があったのか,みんなで意見交流をしながら露頭観察.

ここで見られる須佐層群は砂泥互層のみかと思っていたが,どうやら砂泥互層の下部には轢が混じっている層が.何だこれは,,,!と思わず写真撮影.

轢はめちゃめちゃ大きいものまで存在している.

とここで,白井先生が即席の図を用いて説明してくださった.何でも,下部の轢まじりの層が堆積した際はまだ供給源の河口から近い浅海域で堆積していたため,轢が混じっていたが,これが日本海の拡大に伴って堆積環境が陸から海の沖の方に移動していったため,轢まじりの層の上部に砂泥互層が堆積したとのこと.とてもわかり易い.

とここで,断層のようになっている場所を発見.しかし,これはどうやら塩基性岩脈が貫入している場所らしい.

この岩脈の延長にあたる海岸を見てみると,ここと同じように岩脈のとこが削られていた.空間的な広がりを実感できる良い教材.

ここでも全体で記念撮影.

  畳ヶ淵

15:20 本日最後の見学地、畳ヶ淵に到着。まず出迎えてくれたのは、見どころを紹介してくれる大きな看板。畳ヶ淵は阿武単成火山群の噴火によって流れ出た玄武岩質溶岩の経路にあたる.

畳ヶ淵の動画はこちら

階段を下て畳ヶ淵に。玄武岩の柱状節理と川のせせらぎがとても美しい。普通に観光としても穴場スポットかもしれない。

畳ヶ淵の柱状節理は玄武洞の柱状節理と比べてかなり大きめな感じ。

畳ヶ淵の端っこのほうにある柱状節理は、なんと水中に浮いているようになっている。どうして水中の部分はなくなってしまっているのかを考えるのも面白い。

  龍鱗郷

16:30 広島県地学部会とは解散してから、せっかくここまで来たからということで大学生メンバー(+教員1名)でもう少しぶらり。

龍鱗郷の動画はこちら

龍鱗郷は文字通り、柱状節理が龍の鱗のように見えるからついた名前。

道路を挟んで反対側の展望台にも柱状節理の岩石たちが敷き詰められている。

柱状節理に立って柱状節理を見る人たち。