隠岐の島(島後)
今回は,野外に出ることを生きがいにしてきた修了生・卒業生が中心となって企画した巡検.年度当初からの念願である隠岐の島へ向かうこととした.
隠岐の島
隠岐の島は,島根半島の北40〜80kmの日本海に点在する4つの有人島と多数の無人島から構成されており,その全域は,「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されている.
大地の成り立ちは,時代を大きく4つ(大陸縁の時代,日本海形成の時代,火山島の時代・半島から離島への時代)に分けることができ,人の営み・生態系のつながりとともに隠岐の大地の恵みを感じることができる.
1日目
大学集合は朝5時20分.七類港に向けて夜明け前の西条を出発する.
8時20分,予定通り七類港に到着.フェリー利用者用の無料駐車場があるので便利.
9時00分,フェリーおきが出港.乗船時間は2時間半.加えて海上は時化ているらしい….嫌な予感.
寒いので貸出毛布(\30)で暖を取る人.
海上の波は高く,船は大揺れ.座っているとすぐに酔いそうなので,珍しく早朝の出発で寝不足も手伝って,大人しく寝るのが一番の対処法.
岬の爆裂火口
フェリーで西郷港へ入港する直前,進行方向右手には岬の爆裂火口が観察できる.
崖の上は,0.55Maに噴出した玄武岩溶岩からなる溶岩台地で,平坦な土地を生かして隠岐空港が建設されている.
お椀状に見える地形は,火口の東半分が水蒸気爆発によって吹き飛ばされた跡で,火口の直径は250mにも及ぶ.
風が強すぎて,メガネが飛びそうな人.
11時25分,西郷港に到着.レンタカーを借りてまずは昼食の買い出し.
お世話になるのはココ,ショッピングセンターひまり.
巡検中,幾度となくお世話になる.
隠岐片麻岩(銚子ダム)
12時20分,銚子ダムに到着.まずは昼食.依然として強い寒気でお弁当ごと飛んでいきそうな強風.
ここでは,日本が大陸の一部だった証拠である250Maのミグマタイト質片麻岩が観察できる.
白雲母やガーネットが観察できる.
■ミグマタイト 変成岩と花崗岩質マグマとが混じり合ってできた片麻岩状の岩石.
鎧岩(海苔田ノ浦遊歩道)
13時15分,海苔田ノ浦遊歩道入口に到着.鎧岩までは片道30分ほど歩く.
途中には,柱状節理の発達した玄武岩が崩れた岩場が.
六角柱状の玄武岩を間近に観察することができる.
鎧岩まであと一歩のところで一行を襲う暴風.雪も混じってなかなかハード.
迫力満点の鎧岩.苦労して見に行った甲斐がありました.
■鎧岩 下部は5.5Maに貫入した粗面岩で、上部は2.5Maに噴出した玄武岩溶岩である.いずれも冷却時に生じる柱状節理がよく発達している.
浄土ヶ浦の湖成層(時張山層)
14時45分,浄土ヶ浦遊歩道入口に到着.ここでは,26〜24Ma頃(日本海が海になる前の湖だった時代)の堆積岩や火山岩を観察することができる.
10種類以上の岩石が狭い範囲に分布していることから,海岸の礫もさまざまである.
湖の斜面で発生した混濁流〜土石流の堆積物による砂岩泥岩互層も確認できる.
湖の周辺での火山活動を物語る火山豆石も確認できた.
日本海の荒波に飲まれそうな人.
黒島のマントルゼノリス(大久)
15時40分,黒島展望台に到着.ここでは大久北玄武岩類が露出しており,マントルゼノリスを含むものも.
きれいなかんらん石を一目したいと海岸を歩く.奥に見えるのは黒島.
転石ではあるが,マントルゼノリスを含む玄武岩を発見!
お宿とか
お宿は都万にある「あいらんどパークホテル・ログハウス」.夕食は,ごま豆乳鍋!
2日目
2日目は島後の西海岸を巡る.天気の回復に期待.
奥津戸の流紋岩
8時30分,奥津戸遊歩道入口に到着.
ここでは,重栖層下部の流紋岩溶岩が観察できる.
流紋岩の名前の由来ともなった流理構造がはっきり.
はじめは90°近い傾斜をもった流理構造が,次第に緩やかな傾斜を示すようになる.
これは,下から上昇してきたマグマが横方向に向きを変えて次々と流れ出たことを示し,噴火の様子を物語っている.
ここで突然のみぞれが….少しばかりの雨宿り.
隠岐国分寺
昼食を買いに,ひまりへ向かうも開店前.
せっかくなので,近くの「隠岐国分寺」へと向かった.
隠岐へ配流された後醍醐天皇の行在所跡とされている.
ローソク岩展望台
ひまりで買い出しを済ませ,11時00分,ローソク岩展望台に到着.
昼食をとって,ローソク岩により近い第二展望台へと向かう.
高低差140mをくだること,およそ10分.展望台に到着.
ローソク岩周辺は約5.5Maの重栖層に属する粗面岩溶岩・火砕岩からなり,日本海の荒波によって侵食作用を受け,多数の海食崖が形成されている.
そのような侵食作用を受けた結果,ローソク島のような離れ岩や馬背島のような海食洞といった地形が見られる.
せっかくのビュースポットなので集合写真.
代の火道
12時35分,代港に到着.
ここでは,重栖層の火山岩類・火砕岩を観察できる.
中でも注目すべきは,五箇流紋岩(重栖層下部)に貫入する大領粗面岩(重栖層中部)のフィーダー岩脈である.
フィーダー岩脈は,マグマの通り道(火道)に充填されたマグマが冷却固結することで岩脈となったもので,代港南側の崎山周辺や北側でもこの火道から供給された粗面岩が確認できる.
岩脈北側の境界(左:流紋岩溶岩,右:粗面岩岩脈).黒い部分は火山ガラスからなる急冷相(チルドマージン)である.
岩脈南側の境界(左:粗面岩岩脈,右:流紋岩火砕岩).火砕岩中に粗面岩が一部,貫入している.
スケールの大きさに圧倒される人.
福浦トンネル
13時25分,福浦トンネル入口に到着.
重栖層の粗面岩火砕岩を削って作られたこのトンネルは,2005年に土木遺産として指定されるなど地質学以外の観点からも評価されている.
写真左の小さなトンネルはノミを使った手彫りで,右のトンネルは手彫りとダイナマイトを使って作られた.
波食棚も発達している.
壇鏡の滝
14時25分,壇鏡神社に到着.
壇鏡の滝は,滝の裏側にまわって滝が見れるとあって有名なスポット.
ぜひとも写真に収めたいと頑張るカメラマンたち.
水量が少なく,イマイチではあるが日が差したタイミングてシャッターを切る.
SNS映えしそうな写真が撮れた気がする.
岸浜の黒曜石
16時00分,岸浜峠に到着.
しかし,目的の露頭を発見することは出来ず….おそらく道路整備によってコンクリートに埋もれてしまったのだろう.
海岸へ向かうと,多数の黒曜石の礫を発見することが出来た.
2日目の夜は「隠岐誉」とともにキムチ鍋を食して,幸せな気持ちになった.
3日目
西郷岬
9時50分,初日のフェリーから見た爆裂火口がある台地に建つ灯台に到着.
日本海に向かって.
迫力のある崖.赤色の高温酸化帯が確認できる.
灯台からはトカゲ岩も見える.
隠岐自然館
10時45分,西郷港近くにある隠岐自然館に到着.
さまざまな展示に大興奮の一行.
びっくりしたのはこちら.なんと巨木「八百杉」の枝らしい.
幹はどんな大きさなんだろうか.
説明もわかりやすい。
隠岐の島中の岩石が集めて展示してある。
昼食・味乃蔵
11時55分,最終日くらいはお店で食べようと「味乃蔵」さんに到着.
人気の海鮮丼は残念ながら品切れ.刺身と天ぷらの定食をいただく.
絶品.ごちそうさまでした.
玉若酢命神社・八百杉
昼食後,自然館で見た巨木「八百杉」に興味をもった一行は玉若酢命神社へ.
なんという大きさ!
樹齢は1000年以上,樹高は約30mだという.
帰路
無事にレンタカーを返却し,西郷港へ.
卒業・修了生はフェリー待合室でお疲れの様子.
名残惜しそうな背中.
境港の「魚山亭」でおいしい海鮮丼を頂き,幸せな気持ちになった.
3日間の巡検,卒業・修了巡検にふさわしい充実したものとなりました.