元宇品
元宇品では広島湾に面した海岸沿いに整備された遊歩道沿い連続した露頭が観察できるため、ルートマップを作成しながら地層の広がりについて考える野外観察実習に最適な地である。
この陸繋島は全域に広島花崗岩が分布しているが、詳細には中粒の黒雲母花崗岩に細粒な黒雲母花崗岩(アプライト)が貫入している。
今回は学部生の授業の一環として野外観察を行い、地質図の作成にトライしてみた。
■元宇品観察の手引き■
観察開始
プリンスホテル南側に集合し、観察スタート。
このあたりは中粒花崗岩です。
まずはクリノメーターの使い方を復習します。
苦戦している人もちらほら。
手が届かないところも後輩がいれば安心です()。
早速中粒花崗岩とアプライトの境界を発見。地研が率先して確認に行きます。
境界面を海側に伸ばしたあたりには節理が同じ方向に伸びている。節理の方向に貫入しやすいのだろうか。
これがアプライト。全体的にのっぺりとしていて、有色鉱物がほとんどないのが特徴。
中粒花崗岩中の暗色包有物。元宇品最大のものだと人頭大のものまであります。
どこにどんな岩石や断層があったか、細かく記載していくことで、観察の目が養われます。
インプットするだけでなく、地元のおじいちゃん相手にアウトプットしていくことが理解の近道です。
海中まで調査をしようとみんな意欲的です。
元宇品をほぼ一周したところで、最初の地層境界の裏側にあたると考えられる露頭に到達。
選ばれたものしかたどり着けないような場所なので、探してみてください。
様々な地質
元宇品ではいろいろな興味深い地質が見られます。
海食洞の卵。胸あたりの高さなので、今より海水準が2mは高かった時代のものでしょう。
ミニ海食崖。
景勝地になるような大きな海食洞や海食崖も、最初はこのような小さな侵食から始まると考えると、自然のエネルギーとともに壮大な時間の経過を感じずにはいられない。
花崗岩中のちりめん状水平節理。
アプライト脈を切る正断層。
断層を切る断層。初心者にはどちらが先か判断が難しいようです。断層で切られた地層がなくて、対応させられないのが難易度を挙げているようです。
墨を流したような模様から墨流し構造と呼ばれます(そのまんま)。
無色鉱物が優先的に晶出していく中で、押し出された有色鉱物がすでに結晶化した部分の隙間を縫うように晶出してできる構造。
このように興味深い地質が目白押しの元宇品ですが、衣類をまとった興味深い海生生物もご覧になれます。